東日本大震災で被災した岩手県野田村のお父さん5名が、自らの手で建設した野田村だらすこ市民共同発電所。ここを会場に、災害に強い地域づくりや、エネルギー自立について学ぶ「自然エネルギー学校」が、7月1日、2日の2日間で開催されました。
3.11から約5年が経過した野田村では、住宅の自主再建や災害公営住宅への入居が進み、最大の課題であった仮設住宅問題が一区切りしつつあります。そこで今回の自然エネルギー学校は、太陽光発電の原点である住宅での活用に立ち返り、屋根貸し制度を利用した復興住宅への太陽光発電設置の提案や、将来増えることが予想される独立型太陽光発電の住宅での導入をメインにプログラムを展開しました。
太陽光発電を系統へはつながずに(オフグリッド)運用する際にカギとなるのが蓄電池です。鉛バッテリーの再生&長寿命化事業を手がける有限会社ぎょうむの大庭正義さんは、「通常、3~4年で寿命を迎える鉛バッテリーが、活性化剤を投入することで、その寿命を約2倍に増やすことができる。電池の運用コストが1/2になるだけでなく、バッテリーの廃棄量&製造量を減らすことができるため、CO2の大幅な削減にもつながる」と、鉛バッテリーの経済的&環境的なメリットと語ります。
気になる再生バッテリーの実力ですが、実際に電圧を測ってみても、新品と変わらない状態に回復していました。リチウムイオン電池などに比べて、古い技術というイメージの鉛蓄電池ですが、低コストで長く使える電池として、太陽光発電のオフグリッド化にも大いに活躍してくれそうです。
野田村では行政・民間による自然エネルギーの導入も進んでいます。今年5月末には出力14メガワットの「野田バイオマス発電所」が完成し、8月より商業運転が開始されます。バイオマス発電には、森林保護や林業の活性化、雇用の促進が期待できる一方で、さまざまな課題も指摘されています。燃料となる間伐材、未利用材の調達が地域だけでは難しく、海外からの輸入に頼らざるをえないこと、国内の発電所の多くが熱利用を行っておらず、エネルギーの無駄使いになりかねないことなど――。そんな疑問も抱きつつ、本格運転前の同発電所を見学することができました。
同発電所の担当者からは、「海外製のボイラーを採用しており、水分量が多く燃料になりづらい樹皮など、これまで捨てられていた原料についてもすべて燃料化できること」や、「当初は一部外材を利用するが、将来的にはすべての原料を地域材・国産材だけでまかなうことを目指していること」、熱利用についても「村と協議会をつくり、地域への熱供給実現に向け話し合っている」などの説明がありました。また従業員として野田村民を多く採用するなど、雇用確保にもつなげているとのことです。自社の利益だけでなく、地域への貢献など、長期的な視野に立って経営に取り組んでいる姿勢を強く感じました。
自然エネルギー学校の目的は学びだけでありません。今回は、七夕直前ということもあり、野田村の満天の星空を堪能してもらおうと、講師に天体観測のプロ・一戸町観光天文台台長の吉田偉峰(いほう)さんを迎え、星空観察会を企画しました。天体望遠鏡から見る土星の輪の迫力、そして肉眼で見る星のまたたきに、夜空の美しさを再認識する機会になりました。
また、参加者が寝食を共に過ごしたのが、アジア民族造形館内にある築150年以上の庵日形井(いおりひかたい)です。囲炉裏を囲み、燻る火を眺めながら、ゆっくりと流れる時間を楽しみました。
初夏の北三陸はウニ漁の最盛期ということもあり、村の魚屋さんでは殻付きのウニがたくさん売られていました。もちろん即購入。その場で開いて食べるおいしさは格別でした。そして次回の自然エネルギー学校はマツタケの時期! 野田村の旬の幸を目当ての参加も大歓迎です。