太陽光発電の設置義務制度を含む東京都環境確保条例改正への意見

提言・リリース
2022年6月24日

「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)の改正について(中間のまとめ)」のパブリックコメント募集に対し、太陽光発電ネットワークは以下の意見を提出しました(抜粋)。詳細説明を含む全文は意見書をご覧ください。

全体

【パブコメ結果の公表方法】 各意⾒が「事実を適切に認識した上での意⾒かどうか」に関する事実情報も付けて、結果を公表してください。

【都⺠の声の聴き方】 無作為抽出で一定数の都⺠を選び(統計的に有意な回答数を得られるであろう数)、気候危機に関する基礎情報を提供した上で、太陽光発電設置義務化についてのアンケートを取ってはどうでしょうか。

【基準年について】 削減目標や削減実績の「基準年」を2013年に変更することを検討してください。運⽤中の諸制度との関係で難しい場合は「2013年比」「2010年比」の値も併記してください。

P.12 「2030年カーボンハーフに向けた取組の基本的考え方」

2030年削減目標の引き上げを検討してください。IPCCの「1.5℃特別報告書」以降、本気で温暖化対策に取り組む国や⾃治体や市⺠、事業者の間では下記2点が共通認識となっています。

温暖化を1.5℃未満に留めるため、世界全体の温室効果ガスを2010年比で▲45%以上削減する

これまでの累積排出量が大きく、1人当たり排出量が現在でも途上国の数倍〜10倍以上となっている先進国には、より重い削減責任がある

都の「2000年比半減」目標は、2010年実績比では温室効果ガス全体で▲46%、二酸化炭素で▲45%削減という目標値になると思われます。これは上記世界平均ギリギリの目標値であり、世界の都市のトップランナーを目指すという都の基本スタンスに合致しないものとなっているのではないでしょうか。台風19号など温暖化型激甚災害の被災地でもある⻑野県では、「2030年までが人類の未来を決定づける」という危機意識を世界と共有し、2030年までに2010年比で6割削減」という目標を掲げています。「中間まとめ」にもあるとおり、都外での再エネ拡大、都外からの再エネ調達により、より高い目標達成の達成は実現可能ではないかと思われます。私権制約に踏み込むからには、そうした決意を示す必要があるのではないでしょうか。

P.23 「3段階の評価基準の強化・拡充」

住宅全体の性能を評価しようとすると、どうしても項目が多くなり、CO2削減に関係する項目が、数ある評価項目の一つとして埋もれてしまいがちです。気候危機対策の重要性を踏まえ、少なくとも社会全体でゼロエミッションを達成するまでの間は、「CO2排出量が少ない住宅が価値の高い住宅である」という評価が新築でも中古でも共有されやすいようなウエイトづけや周知の工夫を住宅性能評価制度の中でも工夫してください。

P.30 「住宅等の一定の中小新築建物への太陽光発電設備の設置等を義務付ける新たな制度の創設」

新築住宅への太陽光発電設置義務化の「方向性」には賛成です。しかし今回の施策レベルでは、「(気候危機の)待ったなしの状況(P.6)」への対応としては効果が限定的ですので、「設置可能な全ての建築物で原則、義務化」を早期に検討してください。
  • 危機意識に⾒合った効果を目指すという点ではもっと上を最初から目指すべき
  • 太陽光発電設置の原則義務化に対する都⺠の受容性は十分に高い
  • 補助⾦の原資には、⾃分の意思だけでは設置できない集合住宅居住者や賃貸住宅居住者の都⺠税も含まれていることにも配慮すべき
  • 都外の新設ソーラーシェアリングに出資するなど、⾃宅への設置と同等の追加的CO2削減措置を講じる場合は設置を免除するなどの例外規定を設ける
  • 集合住宅や事業所、ビルも「原則設置」に
  • 気候危機の啓発への協⼒も義務化を

P.40 「太陽光発電設備の適切な導入、運⽤、廃棄等について」

廃棄を考える設備所有者が真っ先に相談するであろう市区町村のゴミ対策課に、業界団体(JPEA)が作成済みの「太陽電池モジュールの適正処理(リサイクル)が可能な産業廃棄物中間処理業者名一覧表」などの情報を提供してください。また、都や市区町村の過去の助成⾦受給者で設置後一定年数以上経過している人に、FIT法改正後の保守管理義務や廃棄についての情報をお知らせしてはどうでしょうか。加えて、火災時の消防作業の安全性確保等のため、太陽光発電システムのラピッドシャットダウン機能について、委員会および都の⾒解・対応方針をまとめてください。

P.46 「再エネの利⽤の更なる拡大」

8行目に「各事業所から報告された再エネによる削減量の評価に当たっては、追加性や持続可能性にも考慮した評価」とあります。再エネ(非FIT)電気の調達であれ、非化石証書などCO2削減クレジットの取得であれ、基準年以降の追加的な「削減量」としてカウントできるのは、「基準年以降に稼働した再エネ設備」由来の再エネ電気だけで、基準年以前に既に稼働していた水⼒発電所等由来の再エネ電気には、「基準年以降の追加的な削減価値」はないと⾒なすべきではないでしょうか。

P.66 「利⽤エネルギーの脱炭素化に関する制度強化」

再エネ電気の利⽤・需要が拡大すれば、それがやがて新規電源の開発、再エネ供給の拡大につながるであろうこと(追加性)は期待できますが、都内の大規模事業所が資⾦⼒を背景に都外から再エネ電気なりクレジットなりを買い集めてくるだけだと、当該事業所のCO2はすぐに減った計算になっても、全国のCO2「実排出量」の削減には結びつかない可能性もあります。実際に大気中に放出されるCO2を減らすために、都内に再エネ電気を供給する再エネ発電所を都が直接建設したり、再エネ発電事業者の設備新設に補助⾦を出したり、実排出量を実際に削減する事業にも⼒を入れてください。

P.72 「制度対象となる関係者など多様な主体との連携・協力」/「都庁の率先行動と国・区市町村等との連携強化」

都の資源(人材や資⾦など)、市区町村の資源(市⺠とのパイプ)、NPO等の資源(企画運営、人脈拡散⼒)などを結集すれば、啓発効果を飛躍的に高められる可能性があります。また市区町村が主体となって市⺠や市⺠団体からアイデアを募り、地域ごとに組み⽴てをつくっていく地域主導型が効果的であると思われます。

P.72 「都庁の率先行動と国・区市町村等との連携強化」

国に対しては、連携に留まらず、対策の加速を求めていくことを明示すべきです。そもそも国の現⾏削減目標は、IPCC等「科学の声」が要求する1.5℃目標に届いていません。「2030年高み▲50%」としても2010年比では▲46%と、「1.5℃特別報告書」で示された、世界全体で2010年比▲45%ギリギリであり、過去の累積排出量や一人当たり排出量など削減の公平性の観点からは不十分な目標です。多くの⾃治体や企業では、国の目標と同じ2030年▲46%がベースとされており(2010年比▲42%)、先進国責任に⾒合った削減目標への修正を要求していくべきです。

P.73 「今回の制度強化対象分野以外の分野での取り組み強化」

都⺠に身近な脱炭素対策の強化を早急に実施してください。たまたま今、「⼾建の新築を考えている」という人は都⺠の数%と思われますので、今制度で最も注目を集めている⼾建への太陽光発電設置義務化問題は、大半の都⺠にとっては「他人事」です。温暖化について多くの都⺠が考え、知るきっかけになるような身近な脱炭素対策についても都⺠に提案し、温暖化対策に関する話があちこちで話題に登るようにしてはどうでしょうか。]]>